包装見積書の読めない用語:段取り費・予備数・損耗率は誰のリスクを負っているのか
💡 💡 一言で理解
包装見積書の段取り費・予備数・損耗率・版代について費用の出所とリスク分担を解説し、複数見積を同一基準で比較する方法を示します。
昨年、家庭用洗剤ブランドの若い購買担当が3社の見積書を持って相談に来ました。比較のしようがない、というのです。A社は単価が最も安いものの下に「段取り費別途」と一行あり、B社は単価が1割ほど高いが版代と段取り込みと明記、C社に至っては総額しか書かれていない。彼女の質問は「この3社、結局どこが安いのですか」でした。
良い質問です。これは算数の問題ではないからです。包装見積書のこれらの用語は、本質的にリスクの配分を示しています。機械を立ち上げる固定費を誰が負担するのか、数量の振れを誰が引き受けるのか、作り損じを誰が持つのか。この3点を理解する方が、単価の小数点以下で争うよりはるかに有効です。
段取り費:不確実な立ち上がりに対する対価
オフセット機が前の仕事からあなたの仕事に切り替わるとき、ローラーを洗い、版を替え、水とインキのバランスを取り、見当を出します。この間、機械は回り人は動き紙は減りますが、良品は1枚も出ません。この費用は3000個刷ろうと3万個刷ろうと変わらない固定費です。段取り費はそれを切り出して請求するものです。
したがって理屈は明快です。数量が少ないほど、1個あたりに乗る段取り費は高くなります。同じ箱でも3000個の単価が3万個の倍以上になるのはこのためです。多くの購買担当は小口が冷遇されていると感じますが、実際にはこの固定費が効いているのです。
では段取り費は交渉できるか。場合によります。標準寸法、標準用紙、4色で、しかも他の仕事と面付けを相乗りできるなら、圧縮の余地は確かにあります。段取り費が複数の仕事で分担されるからです。逆に特色2色、特殊紙、単独で機械を立ち上げる必要がある仕事なら、削った分は必ずどこかで戻ってきます。最も多いのは損耗率での回収、あるいは紙の坪量での調整です。
予備数:最も損をしやすい用語
予備数とは、納品数量を確保するために計画数量に上乗せして投入する分です。業界では印刷予備と後加工予備に分け、前者は段取りと印刷中の損紙、後者は打抜、箔押し、貼り、成形の各工程での損失を指します。
重要なのは契約書の書き方で、大きく2通りあり差は小さくありません。一つは「実納品数で精算、過不足±3%を許容」。つまり9700個のことも10300個のこともあり実数で精算する形で、リスクは主に発注側にあります。超過分は支払い、不足なら自分で手当てする必要があります。もう一つは「10000個を下回らないことを保証、超過分は無償」。この場合リスクは供給側にあり、予想される予備数を単価に織り込んできます。
どちらが絶対に良いということはありませんが、自分がどちらに署名したかは必ず把握すべきです。ある顧客は一度痛い目に遭いました。契約は過不足±5%、販促箱を5万個発注し、納品は52300個。超過2300個を単価で支払いましたが、販促の景品は5万セットしか用意しておらず、残りは2年間倉庫に積まれました。以後、彼は契約に一文を加えています。超過分は事前の書面確認を経てからでなければ精算しない。この一文だけで、その後は同じ問題が起きていません。
損耗率:供給者が自社の工程にどれだけ自信を持っているかが表れる
損耗率が高いからといって、必ずしも供給者が不当なわけではなく、その仕事が本当に難しい場合もあります。工程が重なると損耗は掛け算になります。印刷97%、箔押し96%、打抜98%、貼り95%なら、通しで87%を切ります。工程が多く精密な仕事ほど損耗率が高いのは物理的な必然です。
ですから貼り箱の見積に損耗率12%とあっても、すぐ値切らず一言尋ねてください。どの工程が大半を占めますか、と。正直な供給者なら、箔押しの面積が大きく折り線に近いのでそこで大半が出ます、と答えます。そうすれば設計で位置をずらせないかと返せます。この対話は本当に費用を下げますが、力ずくの値切りは下げません。
逆に、手の込んだ仕事なのに損耗率が極端に低い見積はむしろ警戒すべきです。経験がなく計算できていないなら途中で追加請求が来ますし、そうでなければ品質基準を下げて押し切るつもりで、色や見当が多少ずれたものも良品として納めてくることになります。
版代と抜き型代:一度きりか、繰り返しか
版代はCTP出力の費用で、色数と判サイズで決まり、4色なら4版です。抜き型代は打抜の型を起こす費用で、箱型の複雑さと寸法によります。いずれも一度きりの費用ですが、契約に書くべき細部が2つあります。
一つはリピート時に再度請求されるかどうか。CTP版は消耗品で刷り終われば基本的に廃棄なので、リピートで出し直すのは合理的です。抜き型は繰り返し使えるため、リピートで全額を再請求すべきではなく、保管費や修正費程度が妥当です。リピートのたびに型代を満額請求する供給者もいるので、事前に確認してください。
もう一つは型の帰属です。型代を支払った以上、所有権と現物の帰属を明記すべきです。将来供給者を替えるとき、型を引き取れるのか。顧客が費用を負担した型は顧客に帰属するのが通常ですが、明記がなければ「型は当社で保管しているので持ち出しは別途」と言われかねません。
複数の見積を同じ土俵に載せる方法
私が勧めるのは不格好ですが有効な方法です。すべての供給者に同一の様式で提出させ、単価、段取り費、版代、抜き型代、損耗または予備数の規定、運賃と梱包形態の6項目を並記させる。そのうえで「着荷総額 ÷ 実際に使える数量」を自分で計算します。納品数量ではなく使える数量である点が肝心で、予備数の規定によって使えない分が届くなら、その分は差し引きます。
見落とされやすいのが外装箱とパレットです。標準外装込みの見積もあれば裸で報価する見積もあり、着荷後に自社で箱詰めし直す倉庫の人件費は誰も計算していません。
件の購買担当はこの表で3社に問い直し、結果は最初の直感と逆でした。単価が最も安かったA社が、段取り費と過不足規定のせいで着荷総額では最も高かったのです。彼女はこう言いました。「問題は先方の書き方ではなく、私がずっと違うものを比べていたことだったんですね」
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よくある質問
段取り費は交渉できますか。
仕事の性質によります。標準寸法、標準用紙、4色で他の案件と面付けを相乗りできる仕事は段取り費が分担されるため相談の余地があります。特色使用、特殊紙、単独で立ち上げが必要な仕事では、値引き分が損耗率や紙の坪量、後加工の基準で戻ってくるのが通常です。無理に値切るより、面付けできる仕様に調整できないかを尋ねる方が有効です。
「過不足±3%」と「◯個を下回らない」はどう違いますか。
前者は実納品数で精算し数量変動のリスクは発注側にあります。後者は供給側が下限を保証し超過分は通常無償ですが、予想される予備数が単価に織り込まれます。優劣の問題ではなく、自分がどちらで契約したかを把握することが重要で、あわせて超過分は事前の書面確認を経て精算する旨を明記することを勧めます。
損耗率が10%を超えるのは高すぎますか。
必ずしもそうではありません。工程が重なると損耗は掛け算になり、貼り箱、大面積の箔押し、複雑な打抜は本質的に損耗が高くなります。むしろ尋ねるべきは内訳で、どの工程が大半を占めるか、設計変更(箔押しを折り線から離すなど)で下げられるかです。逆に複雑な仕事で極端に低い損耗率が提示された場合は、途中の追加請求や検収基準の切り下げに注意が必要です。
リピート時に抜き型代を再度払う必要がありますか。
通常は全額を払う必要はありません。CTP版は消耗品なので出し直しは合理的ですが、抜き型は再利用できるため、リピートでは保管費や修正費程度にとどめるべきです。初回契約で、費用負担者に型が帰属すること、リピートでは型代を再請求しないこと、供給者変更時に現物を引き取れることを明記してください。
複数の見積を同一基準で比較するには。
同一様式で単価、段取り費、版代、抜き型代、損耗・予備数の規定、運賃と外装形態の6項目を提出させ、「着荷総額 ÷ 実際に使える数量」を計算します。過不足規定によって使えない分が届く場合はその数量を差し引き、標準外装やパレットが含まれるかも確認して、再梱包の人件費が隠れないようにします。
総額だけを示す供給者は候補から外すべきですか。
直ちに外す必要はありませんが、内訳の提出を求めてください。総額のみでは、数量や仕様、工程が変わったときに換算できず、変更時に必ず争いになります。値切るためではなく変更に備えるためだと説明するとよいでしょう。内訳を出せる供給者は自社の原価構造を把握しており、その後の協業もしやすい傾向があります。
