包装材料の炭素排出量算定における4つの手法:中堅・中小印刷工場がブランドオーナーからScope 3データの提示を求められる際の対応範囲
💡 💡 一言で理解
包装の炭素排出算定には ISO 14064 / GHG Protocol / PAS 2050 / GB/T 51316 の4種類の手法がありますが、印刷工場が算定できるのは Scope 1+2 と生産工程の直接データのみであり、Scope 3 はサプライチェーン全体に関わるため印刷工場では把握できません。本稿では、4種類の手法の違い、印刷工場が算定可能な3種類のデータ、入手できない4種類の Scope 3 データ、そして3種類の顧客の本当のニーズシーンを分かりやすく解説し、印刷工場向けに「データ台帳+対応費項目別計上」という対応策を提案します。
今年の5月、南京で欧米向けの化粧箱を製造しているクライアントから相談を受けた。ドイツの取引先に「包装カーボンフットプリント報告書」を提出する必要があるとのことだった。ドイツの取引先が提示したテンプレートはGHG Protocol Scope 3(バリューチェーン間接排出)の表で、印刷工場に「原料から出荷まで」のカーボン排出データを記入させるというものだった。クライアントの本音はこうだ:「去年も求められたが半年先延ばしにした。今年はもう無理だ。」
私は当時3日間かけて各種の炭素排出量算定方法を調べ、最終的に出した答えは——印刷工場が算出できるのはScope 1(直接排出)+ Scope 2(購入電力由来排出)だけで、Scope 3は原料側のデータが必要で印刷工場では入手できないため、ブランド側が製紙会社やインク会社に問い合わせるしかない、というものだった。このクライアントは最終的にサードパーティの炭素算定コンサルティング会社に依頼して報告書を作成してもらい、印刷工場は5種類のデータを提供して、総額3.8万元だった。
これが中小印刷工場の「炭素排出」における最もリアルな現実だ——算定方法は数多くあるが、算出できるのはほんの一角に過ぎない。
4種類の炭素排出算定方法の本当の違い
包装業界で一般的に用いられる炭素排出算定方法は4種類ある。どれも似たような名称だが、適用シーンと算定範囲はまったく異なる。
| 方法 | 発表機関 | 適用範囲 | データ要件 | 印刷工場で可能か |
|---|---|---|---|---|
| ISO 14064-1 | 国際標準化機構 | 組織レベル温室効果ガス算定 | Scope 1+2+3 全範囲 | Scope 1+2の一部は算出可能 |
| GHG Protocol | WRI + WBCSD | 組織/製品/プロジェクトの3レベル算定 | Scope 1+2+3 全範囲 | Scope 1+2の一部は算出可能 |
| PAS 2050 | 英国標準協会(BSI) | 製品ライフサイクル全体のカーボンフットプリント | 原料→生産→輸送→使用→廃棄 | 生産工程は算出可能、それ以外は困難 |
| GB/T 51316-2018 | 中国国家標準化管理委員会 | 企業温室効果ガス排出算定 | Scope 1+2(国内コンプライアンス) | 算出可能だが国内では主に排出規制対象企業向け |
この4つの方法の「印刷工場で可能か」欄は一見同じように見えるが、本当の違いはデータ取得の難易度にある。簡単にまとめると:
- ISO 14064 / GHG Protocol——国際標準で欧米のクライアントが最も求めるが、Scope 3データは印刷工場では基本的に入手できない
- PAS 2050——製品レベルで、英国のTetherやオランダのAlbert Heijnなど大手小売業者が要求したことがあり、「包装カーボンフットプリント」で最も参照される方法
- GB/T 51316——国内のコンプライアンス向けで、主に排出規制対象企業(年間エネルギー消費5000トン標準炭以上)のみが必要であり、印刷工場は基本的に対象外
したがって印刷工場が実際に直面する算定シーンの80%は、ISO 14064 + GHG ProtocolのScope 3 + PAS 2050の製品レベルであり、国内のGB/T 51316は印刷工場には基本的に関係しない。
印刷工場が算出できる3種類のデータ
Scope 3データは入手困難だが、印刷工場自身が算出できるデータは3種類ある。これらはブランド側に報告書を作成してもらう際に必ず提供する「生産側の基礎データ」である。
第1類:Scope 1 直接排出(インク溶剤、天然ガス、軽油)
印刷工場で算出可能な部分:
- インク溶剤の揮発——月間インク/溶剤購入量 × VOC排出係数(約2.5〜3.5 kg CO2e/kg 溶剤)
- 天然ガス燃焼——月間天然ガス使用量 × 排出係数(1.885 kg CO2e/m³ 天然ガス)
- 軽油/ガソリン(輸送、印刷機発電用)——月間燃料消費量 × 排出係数(軽油3.16 kg CO2e/L、ガソリン2.93 kg CO2e/L)
データ出典:印刷工場の「購買台帳」+「エネルギーデータ台帳」。LeXiangは毎月1回購買・エネルギー関連データをエクスポートし、炭素算定の基礎データとしている。
第2類:Scope 2 購入電力由来排出
印刷工場で算出可能な部分:
- 購入電力 → 月間電力使用量 × 電力網排出係数(華東地域で約0.7〜0.8 kg CO2e/kWh、国家発展改革委員会が毎年更新)
- 購入熱エネルギー → 月間熱使用量 × 熱排出係数(約0.11 kg CO2e/MJ)
データ出典:電気料金請求書。LeXiangは電気料金請求書を毎月アーカイブし、Scope 2のデータソースとしている。
第3類:生産工程の直接データ(単位製品あたりエネルギー消費量、損耗)
印刷工場で算出可能な部分:
- 単位製品あたりエネルギー消費量——1箱あたりの印刷/抜き/貼りの電力 + 天然ガス消費
- 単位製品あたり材料ロス——紙、インク、糊の実際の使用量と理論使用量の差
- 単位製品あたり廃棄物発生量——廃棄紙、廃棄インク、廃棄溶剤の発生量
データ出典:印刷工場の「生産日報」+「物料台帳」。これはPAS 2050報告書における「生産段階」のコアデータであり、印刷工場は台帳を構築しなければ提供できない。
印刷工場が入手できない4種類のScope 3データ
Scope 3(バリューチェーン間接排出)は、印刷工場が基本的にデータを入手できない領域であり、ブランド側がサプライヤーに問い合わせる必要がある。
- 原材料調達段階——製紙工場の炭素排出データ(製紙会社のデータ)、インク製造の炭素排出データ(インク会社のデータ)、糊製造の炭素排出データ(糊会社のデータ)。印刷工場ができるのはサプライヤー名と購入量を記録するだけで、具体的な排出データは川上に問い合わせる必要がある
- 上流輸送——原材料がサプライヤーから印刷工場に届くまでの輸送距離、輸送手段、輸送量に対応する排出
- 下流輸送——完成品が印刷工場からブランド側の倉庫/小売店に届くまでの輸送排出
- 製品の使用と廃棄——消費者が包装を使用する過程での排出、包装廃棄後の回収/焼却/埋立による排出
これがScope 3の難しさの理由だ——サプライチェーン全体に関わるため、印刷工場はその中の一環に過ぎず、独立して算定することはできない。前述の南京のクライアントは最終的に炭素算定コンサルティング会社に依頼し、コンサルティング会社が製紙会社に製紙のカーボンフットプリントデータを問い合わせ(欧米の製紙会社は基本的に所有している)、印刷工場はScope 1+2 + 生産工程の直接データのみを担当した。
3種類のクライアントのリアルな要求シーン
印刷工場はクライアントごとに炭素排出の要求シーンが大きく異なるため、3種類に分類した。
シーン1:欧米ブランド側がScope 3報告書を要求
最も一般的。クライアントが求めているのは印刷工場の報告書ではなく、「Scope 3における印刷工場の貢献データ」だ。印刷工場は5種類の生産データ(紙使用量、インク溶剤使用量、電力使用量、ガス使用量、輸送距離)を提供し、ブランド側または第三者機関がScope 3報告書にまとめる。
実際の事例:江蘇省の電子機器向け包装を製造する印刷工場は、毎年AppleやDellに納品しているが、AppleがScope 3データ表を要求しているため、印刷工場は毎年Excelテンプレートを提出し、5種類のデータを月単位で記入する。Appleには独自の集計チームがあり、製品全体のScope 3報告書にまとめる。印刷工場はあくまで「データ提供者」であり、「報告書発行者」ではない。
シーン2:ECプラットフォームがグリーン包装のカーボンフットプリントを要求
頻度は中程度。JD.com、Tmall、Amazonはグリーン包装のカーボンフットプリント情報開示要件を打ち出しているが、現状は多くが「情報開示の奨励」であり、義務ではない。この種の要求を受けた場合、印刷工場の実際の対応は次のとおり。
- 単位製品あたりの5種類の基礎データを提供
- ブランド側が第三者機関に委託して完全な報告書を作成
- 報告書の費用はブランド側が負担し、印刷工場は「データ協力料」として注文1件あたり500〜1500元を受領
LeXiangの現在の対応は「データ協力料」を別項目として見積もり、箱の単価と混ぜないことで、クライアントに何に対する支払いなのかを明確に示している。
シーン3:政府/業界団体が低炭素モデル工場を要求
頻度は低いが重視が必要。江蘇省、広東省、浙江省の工信庁は「低炭素モデル企業」「グリーン工場」の選定を実施しており、企業に炭素排出報告書の提出を求める。印刷工場がこの要求に遭遇した場合:
- 「グリーン工場」/「低炭素モデル」申請の選定には必ずGB/T 51316報告書が必要で、期間は3〜6か月、費用は5〜10万元
- 政府の選定には通常専用の補助金があり、印刷工場の実質的なコストは2〜5万元
LeXiangは2025年に「江蘇省レベルグリーン工場」の選定に応募し、炭素排出報告書に4.8万元を費やし、政府補助金として3万元を受領し、純コストは1.8万元だった。証明書の有効期間は3年間で、期間中は政府関連の受注で加点がある。
印刷工場の3つの対応戦略
クライアントからの炭素排出データ要求が頻発するなか、印刷工場には3つの対応戦略がある。
戦略1:5種類のデータ台帳を構築する——紙購入量、インク溶剤購入量、電力使用量、ガス使用量、輸送距離。毎月1回アーカイブし、炭素算定の基礎とする。投入コスト:事務員1名が月1〜2日。
戦略2:印刷工場は「カーボンフットプリント報告書」を自ら作成しない——これは第三者コンサルティング会社の業務であり、印刷工場がやるとコストが高く、専門性も不足する。印刷工場が担うのは「データ提供側」であり、データをブランド側や第三者機関に渡す役割である。
戦略3:見積もり書に「炭素データ協力料」を別項目として記載する——毎回500〜1500元とし、クライアントに印刷工場の炭素データにはコストがかかることを認識させる、無償提供ではないことを明示する。これは中小印刷工場が炭素排出関連で最初に収益を上げる方法だ。
炭素データ台帳の5つのコアフィールド
印刷工場が炭素データ台帳を構築するには、次の5つのコアフィールドが必須である。
- 紙購入量(kg/月)——SKU別に分割し、FSC/再生紙の識別を含む
- インク溶剤購入量(kg/月)——インク種類別に分割(水性/溶剤型/UV)
- 電力使用量(kWh/月)——作業場別に分割
- ガス使用量(m³/月)——用途別に分割(印刷/食堂/宿舎)
- 輸送距離(km/月)——原材料/完成品別に輸送手段を分割
LeXiangはERPに5つのフィールドを追加し、毎月Excelをエクスポートしてクライアントに提供している。クライアント側の第三者機関はこのExcelを使って直接報告書を作成するため、効率は非常に高い。
重要な判断
印刷工場は「炭素排出」に関して冷静であるべきだ。算定方法はブランド側の仕事であり、印刷工場ができるのは5種類の基礎データを提供することだけ。受注のために無理にScope 3報告書を受注してはならない。専門性もデータ取得能力も不足しているからだ。データ台帳を確実に整備し、協力費を明確に別項目化すること、これが印刷工場が炭素排出コンプライアンスを継続的に対応していくための正しい姿勢である。
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